シンガポール滞在記②-3:訪星の最たる目的へ。

シンガポール滞在記②-3:訪星の最たる目的へ。

キッチュなテーマパークとお別れし、電車に乗り込みラブラドールパーク駅へ向かう。それにしてもシンガポールはラベンダーやらラブラドールやらラブリーな名前の駅が多い。

ここで、ギルマンバラックスの説明をしておこう。シンガポールナビさんより以下引用。
「植民地時代のイギリス軍施設跡地がシンガポール最大のアート地区として2012年にオープン。広々とした敷地内に現在10以上のギャラリーが出店中。ギャラリーは日本、オーストラリア、ドイツ、イタリアなど世界から集まり、それぞれ個性あふれる作品がゆったりとした雰囲気の中で堪能できます。敷地内にはカフェやレストランもあります。」
シンガポールミヅマアートギャラリーへ」でも述べましたが、日本からはミヅマアートギャラリーはじめ、オオタファインアーツ、小山登美夫ギャラリーが出店をしています。

さあ、そんなアート地区ギルマンバラックスへ、駅から徒歩で向かう。だいたい10分くらいだろうか。道中は特に何もありません。HP(あ、ヒューマンパッカードだ!!と大声で勘違いネームを叫び大恥をかきました;正しくはヒューレットパッカードです。はい。)とか、なんちゃら大学とか、大きな企業、施設がどんどんどんっと立ち並んでいる感じ。しばらく歩くと、おしゃれなネオンサイン「Gillman Barracks」が見えてきた。つきました、念願の、念願の!!と気分は高揚気味なのですが、何やらポツポツと。キッチュにいたときから、雲行きが怪しいなとは思っていたのですが、雨が降り出してしまいました。初日にでくわしたスコールから学習し、折り畳み傘を持参していたので濡れることはなかったですが、2人の心の中では「やはり、雨か」と同じ気持ちが。というのも、なにか大事な場面で雨が降るのですよね。私たちが雨を呼び寄せているのか、雨女/雨男夫婦なのでしょうか、それとも・・・(以下、割愛)。雨は先日のようなスコールのように激しく降ることはなく、小雨程度にお行儀よく振ってくれたので、ちょうどいいかんじにクールダウンできました。

ギルマンバラックスについたのは、レセプションの1時間前くらい。せっかくなので、いろいろなギャラリーを見て回ることにしました。まず、伺ったのは、ギルマンバラックスで一番大きそうな建物内にあるギャラリーSHANGHART GALLERY。開催をしていたのは「PALIMPSESTES | SUN XUN SOLO EXHIBITION」。けど、なんか掃除中だし、welcome感が感じられない。なんだかなーと外に出てみると、、、今日がオープニングだとのお知らせが。あーだから、まだ作品がちゃんと展示されていない&レセプションの準備中でばたばたしていたのねと理解。次に、オオタファインアーツ、さらに小山登美夫ギャラリーとその隣と隣と(ごめんなさい・・・名前をすっかり忘れています)。まだまだ工事中な場所、ギャラリーが入っていない空スペースが目立ち、これからです!という感じでしたが、ここがもっと盛り上がってきたら、アジアのアート発信拠点の1つになるに違いないと感じました。

日も暮れだし、時刻も18:00近くになってきたので、ミヅマアートギャラリーに向かいます。ミヅマはギルマンバラックスの小高い丘の一番上にありました。すでに中は人がちらほら。なんかシンガポールのきれいでおしゃれなお姉さんがいっぱい。海外でのギャラリーのレセプションなどはじめてなのでちょっと緊張。どうしよう、、、とどぎまぎしていると「おーっ」と見知ったハスキーボイスが聞こえてきました。三潴さんです。三潴さんを見たときの安堵感、半端なかったです。もう心の中で「みづまさぁぁぁぁぁあああん」と絶叫。三潴さんの包容力、器の大きさって本当に凄いのですよ。今や超有名&人気ギャラリーのボスですが、ほんとうにあたたかい方です。わたしみたいな小娘でも、大歓迎をしてくださる、、、感無量です。次第に人も増え、ここでも三潴さんの人望、人徳を感じます。

肝心な展示はと言いますと、今日見たどのギャラリーの展示よりも切迫した空気が漂っていました。正面入ると目に飛び込んでくるのが、アイウェイウェイ氏の写真作品。天安門や、靖国神社、ピサの斜塔、オペラハウスなどなど世界の名所(?)に向かって中指を立てているシリーズ《Study of Perceptive(1995-2011)》です。

その向かい側の壁には、梱包されたままの何かが。中身は「椅子」と「ひまわりの種(1つ1つ手作り)」の2つの作品なのですが、何故梱包をされたままなのか。そこが今回の展示のミソです。2014年4月に上海のパワーステーション美術館でCCAA(Chinese Contemporary Art Awards)と呼ばれる中国人作家を顕彰するアワードの第15回の記念展が開催されました。本展に2008年にCCAAの終身最優秀賞(傑出成就奨)を受賞したアイウェイウェイ氏もこの椅子とひまわりの種を展示する予定だったのですが、政府が展示を拒否し、強制撤去をくらい、歴代の受賞者として壁に書かれていた氏の名前も上からホワイトを塗られ、消されてしまったらしいのです。その強制撤去された際の梱包状態をそのまま今回の「BEYOND STUFF」で展示しているということです。壁には、名前が消されているところやなどのパネルも展示もありました。三潴さん曰はく、もともと政治的な意味などなかった作品が、今回の一連の騒動を経て、このような形で展示することでポリティカルなメッセージを孕むものになったと。CCAA 15年記念展のWEBページにも氏の名前はありませんね。→http://www.powerstationofart.org/en/exhibition/detail/ab8cs.html

*アイウェイウェイ氏のCCAAからの名前削除について
「艾未未(アイ・ウェイウェイ)穴倉生活そして生き埋め生活」
http://www.art-it.asia/u/admin_ed_contri13_j/BJ5p3zPvnChyIFOKUYVe/

*アイウェイウェイ氏ひまわりの種について
http://www.shift.jp.org/ja/archives/2011/02/ai_weiwei_sunflower_seeds.html

さらに会場奥へと進むと、鉄でできた運動靴に馬の蹄がくっついている作品があった。作家のLi Mingzhu氏が直々に作品の説明をしてくださった。足の速い馬は急ぎすぎる中国を揶揄しているのだとか。また、運動靴が示すものは散歩であると。散歩とは中国でデモの隠語として使われているらしい。

そのほかにもかなりショッキングな映像作品など、ぐさぐさくるものばかりであった。

展示をすべて見てからのteshの解釈が面白かった。この展示のかくれた共通点は「カモフラージュである」と。Li Mingzhu氏から散歩という隠語を聞いてビビっときたらしい。もちろんLi氏の作品も一見したでけではわからないのであるが、そこに込められたコンセプトや想いは、なるほど公にするのは危ない。そんな危ないメッセージをデモのことを散歩というようにアートでカモフラージュしながら訴えているのである。アイウェイウェイ氏の中指おったてシリーズも然りである。オペラハウスやなどさまざまな名所に中指をつきたてているが、それはすべて天安門への中指突き立てのカモフラージュではないかとtesh。確かに、天安門だけに中指をつきたてている写真のみであったら危ないかもしれない。その最たる矛先を隠すように世界の名所に中指を多々ているのではないだろうかと、、、。

そんな作品に囲まれながら、ふるまっていただいたワインやら月餅を食べている自分を客観的に感じだし、やばい、わたし平和ボケだし、中国のこと知らな過ぎると反省しきりだった。

アートに乗せて発せられる切実なメッセージ。
アートの存在意義ってなんだろう、アートの役割って何だろうと、ぼんやり考えてはいたけれど、アートが持ち得る力、カモフラージュが帯びる言葉以上のメッセージ性を感じた。

帰り際、三潴さんと、三潴さんのご友人からシンガポールのオススメスポットとしてゲイランを紹介してもらう。ご友人曰はく、そこはシンガポールで唯一の赤線地帯らしい。とにかく、そこの料理はどこに入っても間違いないとのことだ。良い情報を入手。展示のことをまだ消化しきれないまま、夜も深まる前にミヅマギャラリーを後にした。
雨はすっかりやんでいて、静かでしっとりした夜だった。
ホテルに帰る前に、アラブストリートで一杯。
シンガポールスリングを飲む。
普段カクテルなんぞ飲まないが、シンガポールだし、ね。
今、シンガポールの若者の間では、水タバコが人気らしく、どこをみてもプカプカプカプカ。
タバコ嫌いなわたしだが、水タバコは好きである。
水タバコの気怠いけむりとシンガポールスリングの甘さが絡み合う。

少し小腹がすいていたのでおつまみに何か頼もうと、フードメニューに目を落とす。
アラビア料理がズラリ。全く聞いたことのないものばかり。
とりあえず、なんかぐっときた名前を注文することに。
それがこれだ(写真参照)。三角にカットされたパンのようなものに真ん中のペーストをつけて食べる。おいしかった。そういえば、オランダの友人 カレルが先日来日をした時、昭和感むんむんの居酒屋に連れて行ったのだが、日本語は全く読めないのでメニューがちんぷんかんぷんなわけである。こちらが適当に頼むのもいいが、それではつまらない。文字の雰囲気で好きなのはどれ?と無茶ぶりをすると「茄子とピーマン炒め」をチョイスした。漢字にひらがなにカタカナ入り混じった混沌漢がよかったのだろうと勝手に解釈。この炒め物もおいしかった。何が言いたいかというと、、、直感って大事!冒険って大事!

そろそろお酒がまわってきたのでホテルまで歩いて帰る。
ライトアップされたモスクは昼見せる顔とはまた違い、神秘的できれいだった。

つづく。

ちなみに、この日アイウェイウェイ氏の十うん万円する書籍を予約した。
気分晴れやかなり。