アーカイブ:ふるさと

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日頃の疲れからだろうか

その心地よい揺れに誘われていつしか眠りについていた

腕は肩から抜け落ち
足は沢庵のようにぐったりし
自己はシートへと埋没していた

ふと目が覚める
バラバラになり溶けきった体に何かが走った

外に目をやると
水が張られ
植えたての稲が
若いながらにすくっと立ち並んでいた

帰ってきたのだ
私は
帰ってきたのだ

今までに感じたことのない感情であった

何故
こんなにも愛おしいのだろう
何故
こんなにも美しいのだろう

安堵とともに心が鼓舞する

ふるさと
という概念を私は初めて知った

この安堵感と胸の高鳴りこそがふるさとなのだと

隣で母が眠る
父も深く呼吸をしながら眠っている

孝行したいと強く思う

幸せな自分に確かに気づく

体を横たえる
体全体が沈んでゆく
とても静かに
あたたかく
そこに恐怖はない
深い深い眠りにつく
ふるさとの呼吸を感じながら
ふるさとの中で


2010-05-23 23:37:17