アーカイヴ:ピラフ的幸福論

アーカイヴ:ピラフ的幸福論

朝から電話が鳴り響く

電話のベルは
苛立っているようには
聞こえない

落ち着いた
ゆったりとした音だった

朝はあまり強くない私も

その電話のベルを
不快に感じなかった

相手が誰か
ろくに確かめもせず
というか、
こんな時間に
私に電話してくる人は
決まっている

だから
確かめる必要もないのだ

通話ボタンを押す

胡麻油で炒めた
高菜ピラフが
予想以上に
おいしかったとの報告だ

そのおいしさは
相手の声色からも伺える

(相手が誰かは言うまでもないだろう。またここで名前なんかはあまり重要ではない)

昨日の夜も
食物の話をした
突然
ちらしずしが食べたいと
欠伸が連鎖するように
私も無性に食べたくなった

話が終わり
電話を切る

まだ朝は静かで
何事も始まっていないようだった

今日は
あいさつ気鳥は
こないのだろうか

ここは平和だ

少なくとも安心して
高菜ピラフの話や
ちらしずしの話を
することができる

ここは安堵に満ちている

少なくとも
皮剥ぎポリスが
見せしめに
生きた人間の皮を
剥いだりしないし

弾を使うのは勿体ないと
銃剣で内臓を引っ掻き回して殺したりしないし

動物園の猛獣達が
人を襲う危険性があると
虎や狼、熊、豹などを
むやみに
打ち殺したりしていないし

効率の悪い
虐殺なんかは行なわれていない

ここは平和だ
高菜ピラフの話を
静かな朝にゆっくりと
話すことができる
ちらしずしの話を
のんびりと
思い出すことができる

しかも、
高菜ピラフや
ちらしずしに
幸せを感じることすらできる

贅沢すぎる幸せだ

ここは平和だ
そして
ここは
幸福に満ち溢れている

2010-02-18 01:08:16